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初めての微分方程式

「微分方程式」と聞くとなんだか難しい話のように感じる人が多いようですが、 簡単に高校数学の知識で解を求められる場合があります。 指数関数の微分と三角関数の微分ができる人なら読める例を扱います。

「微分方程式を解く」とはどういうことか?

未知関数$x$についての微分方程式とは、 $x^{\prime}、 x^{\prime\prime}$などの導関数がいくつか含まれる等式のことを言います。 例えば次の微分方程式を考えてみましょう。

$$\frac{d}{dt}\{x(t)\}=0$$

この式は「$x(t)$は、 $t$で1回微分すると$0$になる関数」のように読むことができます。 こういった”特徴”を持った関数といえば定数$C_1$を用いて、

$$x(t)=C_1$$

であり、 未知だった関数$x$の正体がわかりました。 このように、 与えられた微分方程式を満たす未知関数を求めることを「微分方程式を解く」といいます。

具体的な解(特解)について
$C_1$に数値を代入した$x(t)=1$ や、 $x(t)=19$ なども与えられた微分方程式を満足させます。 具体的に数値を代入して得られる解のことを特解(特殊解)といいます。

任意定数の数

次は2階の微分が入った例を見てみましょう。

$$\frac{d^2}{dt^2}\{x(t)\}=0$$

「$x(t)$は、 $t$で2回微分すると$0$になる関数」という”特徴”から、 定数$C_1、C_2$を用いて、

$$x(t)=C_1{t}+C_2$$

となります。 (実際に2回微分して確かめてみてください。)

ここで、 不定積分を1回実行するたびに積分定数が1つ現れることを考えると、 1階の微分方程式の解には定数が1つ、 2階の微分方程式の解には定数が2つ付くとわかります。 このような定数(後で自由に代入できるので任意定数という)を必要な分だけ持った解のことを特に、 微分方程式の一般解といいます。

・「微分方程式を解く」とは、 与えられた微分方程式を満たす未知関数を求めること
・ $n$階の微分方程式に対して、 $n$個の定数を持った解を「一般解」という
・一般解の任意定数に具体的な値を代入して得られる解を「特解」という

指数関数型の微分方程式

さて、 次の微分方程式を見てみましょう。 $\lambda$は定数とします。

$$\frac{d}{dt}\{x(t)\}=\lambda{x}$$

「$x(t)$は、 $t$で1回微分しても自分自身$x(t)$に戻り、 定数$\lambda$が係数に付く」という”特徴”が読み取れます。 微分してもほぼ無傷で耐える関数と言えば、

$$\frac{d}{dt}\{e^{a{t}}\}=a{e^{a{t}}}$$

のような指数関数の微分公式が連想されます。 したがって例えば、

$$x(t)=e^{\lambda{t}}$$

が解であることがわかります。 これに加えて、

$$x(t)=2e^{\lambda{t}}, x(t)=3e^{\lambda{t}}, \ …$$

なども与えられた微分方程式を満たします。 そこでこれら全ての解を定数$C_1$を用いて表すと

$$x(t)=C_1e^{\lambda{t}}$$

と書けます。 これは後で$C_1=1,2,…$などと自由に代入できる解なので「一般解」であり、 与えられた微分方程式を解くことができました。

三角関数型の微分方程式

最後に、 次の微分方程式を見てみましょう。

$$\frac{d^2}{dt^2}\{x(t)\}=-\omega^2x$$

「$x(t)$は、 $t$で2回微分したら自分自身$x(t)$に戻り、 定数$\omega$の2乗がマイナス倍で係数に付く」という”特徴”が読み取れます。 2回微分したら似た形に戻る関数と言えば、

$$\frac{d^2}{dt^2}\{\sin(a{t})\}=-a^2\sin(a{t})$$

のような三角関数の微分公式が連想されます。 したがって例えば、

$$x(t)=\sin(\omega{t}), 2\sin(\omega{t}), 3\sin(\omega{t}), \ …$$

などが与えられた微分方程式を満たすことがわかります。 さらに、 位相を定数だけズラした解:

$$x(t)=\sin(\omega{t+\pi}), \sin(\omega{t+2\pi}), \ …$$

なども微分方程式を満たします。 そこでこれら全ての解を定数$C_1,C_2$を用いて表すと

$$x(t)=C_1\sin(\omega{t}+C_2)$$

と書けます。 与えられた微分方程式は2階であり、 この解は2個の任意定数を持っているので「一般解」が得られました。 ここで三角関数の加法定理を用いれば、

$$x(t)=C_1^{\prime}\sin(\omega{t})+C_2^{\prime}\cos(\omega{t})$$

のように、 別な形で一般解を表すこともできます。 実際には2つ目の表示の方が問題を解く時に扱いやすいです。

今回の要点

・「微分方程式を解く」とは、 与えられた微分方程式を満たす未知関数を求めること
・ $n$階の微分方程式に対して、 $n$個の定数を持った解を「一般解」という
・一般解の任意定数に具体的な値を代入して得られる解を「特解」という
・$\frac{d}{dt}\{x(t)\}=\lambda{x}\ $の一般解は、 $x(t)=C_1e^{\lambda{t}}$
・$\frac{d^2}{dt^2}\{x(t)\}=-\omega^2x\ $の一般解は、 $x(t)=C_1\sin(\omega{t}+C_2)$
または$\ x(t)=C_1^{\prime}\sin(\omega{t})+C_2^{\prime}\cos(\omega{t})$

実は、 以上の話は全て、「微分する前の形を知っている」ことが前提となっています。 今後はこれに該当しない微分方程式の解き方として例えば変数分離法などの手法を使うことになります。 しかしながら、 今回の話は力学で何度も見ることになる微分方程式なのでマスターしておきましょう。