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高校での物理の内容を微分方程式を使って見直してみる

 これから大学で物理を勉強するために入学前の準備するぞ!とか、高校数学から少し背伸びしてみようかな…という方へ向けた、「微分方程式」の導入をお伝えする記事です。特に今回は、高校で習う物理を題材に、よく出てくる微分方程式の解き方や作り方、物理現象を記述する微分方程式の具体例を紹介します。

 今回の記事では、gif画像のアニメーションを利用した動くグラフなどを作成しました。理解の助けになれば幸いです。

微分方程式って何?高校物理で出てきた方程式と共に紹介

 中学や高校の数学では $x^2-x-2=0$ のような、代数方程式をたくさん解いた経験があると思います。大学でも同じように、たくさん練習して素早く解を求められると良い方程式のジャンルがあります。その1つが、微分方程式です。

 微分方程式とは、関数を決定することが目標の方程式で、未知の関数 $f(x)$ と、未知関数の導関数 $f^{\prime}(x)$とか$f^{\prime\prime}(x)$などが登場する方程式を言います。ここでは2つほど微分方程式の例を紹介します。また、それぞれに具体的な物理の式の一例も載せてありますが、その式を導出する過程などは今回は省略して、提示するだけにします。

微分方程式の例1

$$f^{\prime}(x)=-\textcolor{black}{k}f(x)\ \ \cdots(1)$$

この方程式には、求めたい関数 $f(x)$ と、その導関数 $f^{\prime}(x)$ が入っています。具体的な物理の式としては、抵抗 $R$ とコイル $L$、起電力 $V$ からなる電気回路でのキルヒホッフの式:

$$RI(t)+L\frac{\mathrm{d}I(t)}{\mathrm{d}t}=V$$

があります。電流の時間的な推移 $I(t)$ を求めたい関数と考えれば、その導関数 ${\mathrm{d}I(t)}/{\mathrm{d}t}$ が入っているので、$(1)$式と同じ形になっていることがわかると思います。式としては、抵抗で生じる電圧降下 $RI(t)$ と、コイルで生じる電圧降下 $L\cdot{\mathrm{d}I(t)}/{\mathrm{d}t}$ の和が起電力 $V$ と等しいという意味になります。

微分方程式の例2

$$f^{\prime\prime}(x)=-{\omega}^2f(x)\ \ \cdots(2)$$

この方程式には、求めたい関数 $f(x)$ と、その2階の導関数 $f^{\prime\prime}(x)$ が入っています。具体的な物理の式としては、バネ定数 $k$ のバネに繋がれている質量 $m$ の質点の運動方程式:

$$m\frac{\mathrm{d^2}x(t)}{\mathrm{dt^2}}=-kx(t)$$

があります。質点の位置の時間的な推移 $x(t)$ を求めたい関数と考えれば、その2階の導関数 ${\mathrm{d^2}x(t)}/{\mathrm{dt^2}}$ が入っているので、$(2)$式と同じ形になっていることがわかります。

 高校の教科書では、運動方程式は $ma=F$ と書かれていますが、加速度 $a$ は位置 $x(t)$の変化の割合の変化の割合を表すので2階微分${\mathrm{d^2}x(t)}/{\mathrm{dt^2}}$ として書きました。また、この式では $F=-kx(t)$ の力が注目している質点にかかる力です。

このような微分方程式をなんとか解いて、その関数を決めることが目標となります。つまり、求めたい電流の時間的な推移 $I(t)$ や、質点の位置の時間的な推移 $x(t)$ がどのような関数になっているかを求めるわけです。こんなgifを用意してみました。

「値が増加する関数」といっても、直線的に増えていくのか、指数関数的に増えていくのか、ある値に漸近するように増えるのか…などの情報は、式を解いてみなければわからないから、微分方程式を解いてみようというモチベーションです。数学で微分の単元を学習したときの、1つの役立つ例として、概形も思い浮かばないような関数 $f(x)$ でさえも、増減表を書いちゃえばグラフを描くことができました。それと同じで、微分方程式を解いて関数を求めるとグラフを正確に描くことができます。

変数$x$と$t$

 数学の授業での微分方程式と、物理での微分方程式では、扱う関数の変数が異なる場合が多いです。数学では、グラフの横軸を $x$ にすることが多いので、これを変数にして関数は $f(x)$ とします。物理では、現象を記述・説明するためにグラフの横軸を時間(time)の $t$ にすることが多いため、これを変数にして $f(t)$ とします。先述の位置の関数 $x(t)$ や、電流の関数 $I(t)$ などがこの例です。したがって注意としては、

$$y^{\prime}=y$$

のような方程式があった場合、求める関数が $y(x)$ なのか、$y(t)$ なのかを見極める必要があります。物理を勉強した後の数学の微分方程式のテストで解答を $t$ の関数で書いてしまう、というミスには気をつけた方がいいと思います。

どんな関数が登場するのか?なぜこの式が大切か?

 先にネタバレをしておくと、今回登場する関数は $\sin(x), \cos(x)$ のような三角関数と、$e^{-x}$ のような指数関数だけです。この2つは高校数学で何度も出会った関数ですから、大学に入って知るような関数は出てこないので安心してください。

 この三角・指数関数を使うのは、よく出てくる物理現象の記述に向いているからです。例えば、$1\mathrm{k\Omega}$の抵抗が繋がれた電気回路の電源を入れて$5\mathrm{V}$の電圧を掛け、電流を流したとします。オームの法則から、$5\mathrm{mA}$の電流が生じることになるわけですが、実は電源をオンにした瞬間に$5\mathrm{mA}$が流れるわけではなく、$1\mathrm{mA}$や$3\mathrm{mA}$など、最終状態へ向かって移行する状態を挟んで、$5\mathrm{mA}$に到達します。この現象を過渡現象と呼びます。

このグラフを見ると、$0$に向かって変化していく指数関数 $e^{-x}$ と概形が似ていますね。微分方程式を解いて具体的な関数形が求まると、どの程度の時間が経過すれば $5\mathrm{mA}$ になるのかもわかります。

 また、振動を表現する三角関数も便利です。安定状態から少しズレたために生じる振動現象は三角関数で書くことができます。さらに、複雑な振動でも、実は三角関数に分解することができます。

指数関数

 例えば、指数関数。マイナス乗した $y=e^{-x}$ を考えると、$x=0$ では $y=1$ ですが、$x$が増えるに従ってどんどんと $y=0$ へ近付いていく関数です。これは「ある値に “漸近する” 現象」の記述に適しています。こちらの具体例をいくつか挙げてみます。

ある値に “漸近する” 現象の例
  • 【力学】空気抵抗を考慮した物体の自由落下
  • 【電気回路】抵抗$R$とコンデンサ$C$で構成される回路の充電
  • 【電気回路】抵抗$R$とコイル$L$で構成される回路
  • 【熱力学】温度の減少モデル
  • 【原子】原子核の崩壊

三角関数

 三角関数はどうでしょうか。$y=\sin(x)$ を考えるとこれは、ある値 $y=0$ を中心として$+1$まで増えて、$-1$まで減って…を繰り返す関数です。これは「”振動する” 現象」の記述に適しています。高校物理での具体例をいくつか挙げてみます。

“振動する” 現象の例
  • 【力学】バネに繋がった質点の往復運動
  • 【波動】媒質を伝播していく波
  • 【電気回路】コイル$L$とコンデンサー$C$で構成される回路の電気振動
  • 【電気回路】交流電源

とりあえず微分方程式(過渡現象・単振動のタイプ)を解いてみる

 さっそく微分方程式を解いてみます。できる限り計算の過程を省かず、解き方を覚えられるように書きました。微分方程式の解き方ですが、2次方程式を解くときに因数分解したり・解の公式を使ったり・適当な数字を代入して成り立つかどうか試してみたり…と色々な方法があるように、幅広い手法が存在します。

 変数分離法や、級数や積分因子を使うもの、ラプラス変換をする、それっぽい解を代入して成り立つかどうか試すものなどが挙げられます。今回は一番最後の、「それっぽい解を代入して成り立つかどうか試す」方法で解いてみようと思います。そんな適当で良いのか!?と考えてしまいますが、物理では微分方程式で書かれた原理を出発点として、それを解いて出てきた解を使った議論をするところに面白さがあると私は思うので、とりあえず解ける微分方程式はすぐに解けるようにしておく、というのは1つ大切な視点だと思っています。(実際には解ける微分方程式はそこまで多くないので何回か解いていると自然と覚えてしまう気がします。)

 少し数式が多いですが、苦しくない程度に読み進めてください。この節の最後にまとめのBoxがあるので、そこだけみるのもokです!

解が指数関数のタイプ

$$f^{\prime}(t)=-\textcolor{black}{k}f(t)$$

この方程式の左辺は未知関数 $f(t)$ を一度時間 $t$ で微分したもので、右辺は未知関数 $f(t)$にマイナス$k$を掛けたものです。これは、関数 $f(t)$ に対して「微分を施すこと(左辺)」と「何らかの数を掛け算すること(右辺)」が等しいことを言っている方程式だと解釈できます。

つまり、この微分方程式を満たす解である関数は、このような性質を満たしてくださいね!とお願いされているわけです。微分方程式にはその関数が満たすべきルールが記されているわけです。この微分方程式に対して、例えば2次関数 $f(t)=at^2+bt+c$ を代入してみると、左辺の微分は$$f^{\prime}(t)=2at+b$$であり、右辺の掛け算は$$f(t)=-k\times(at^2+bt+c)$$となり、両辺が恒等的に等しくないため解にはなれません。

 しかしながら、指数関数 $f(t)=e^{-kt}$ を代入してみると、左辺の微分は$$f^{\prime}(t)=-ke^{-kt}$$であり、右辺の掛け算は$$f(t)=-k\times{}e^{-kt}$$となり、これは解と言えそうです。

他の関数は解になる?

 長くなるので他の関数形の代入はここではしませんが、例えば対数関数 $f(t)=\log(t)$ や三角関数 $f(t)=\sin(t)$ を代入してみたり、いろんな関数を足し算・掛け算でミックスした $f(t)=t^2+e^{t}$ や $f(t)=e^{-t}\times\cos(t)$ などの代入も確かめてみてください。

 さて、方程式の解を求めた際、大切なのは他にも解がないかどうか調べることです。解が指数関数であるという大枠から逸れることなく別な解も見つけることができるのですが、それは $f(t)=5e^{-kt}$ や $f(t)=32e^{-kt}$ などの、定数$A$が前についている関数 $f(t)=Ae^{-kt}$ です。実際に代入してみると、左辺の微分は$$f^{\prime}(t)=-kAe^{-kt}$$であり、右辺の掛け算は$$f(t)=-k\times{A}e^{-kt}$$となり、これも解になっています。つまり、定数倍したところで、この指数関数としての特徴(変数 $t$ が $1$ 増えたときにその関数が $e$ 倍される)は変わらず残るため、解として認められるわけです。このような、任意定数を含んだ解のことを一般解と呼びます。

 このことは、関数をベクトル的なイメージで考えることもできます。あるベクトルがその方程式を満たすことがわかった場合に、そのベクトルを定数倍して伸び縮みさせても方程式を満たしてしまう、といった感じです。

解が三角関数のタイプ

$$f^{\prime\prime}(t)=-{\omega}^2f(t)$$

この方程式の左辺は未知関数 $f(t)$ を二回、時間 $t$ で微分したもので、右辺は未知関数 $f(t)$にマイナス${\omega}^2$を掛けたものです。これは、関数 $f(t)$ に対して「微分を2回施すこと(左辺)」と「何らかの数を掛け算すること(右辺)」が等しいことを言っている方程式だと解釈できます。

今度は、どのような関数が当てはまるでしょうか?先ほどと同じ形の指数関数 $f(t)=Ae^{-\omega{t}}$ はどうでしょうか?これは、右辺のマイナスをプラスに変えた微分方程式

$$f^{\prime\prime}(t)=+{\omega}^2f(t)$$

なら満たすことができますが、与えられた微分方程式を満たすことはできません。これは、指数関数の肩の上にマイナスの$\omega{t}$が乗っていたとしても、2回行われた微分で相殺されて、マイナス$\times$マイナスでプラスへと変化してしまうためです。

 解決策としては、指数関数の肩の上に虚数$i$を乗せてしまうのが1つ考えられます。実際、$f(t)=Ae^{i\omega{t}}$ は代入して、与えられた微分方程式を満たすことが確認できます。これは、微分で降りてきた2つの虚数がマイナスへと変化するためです。

 他にも、微分方程式の意味を考えると、その関数 $f(t)$ を2回微分すると、マイナス定数が掛かる、というのが関数に課された条件ですので、今まで経験してきたいろんな関数の微分を想起してみれば…三角関数が当てはまりそうだと閃くわけです。実際、サイン関数なら

$$\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}t^2}\sin(\omega{t})=-{\omega}^2\sin(\omega{t})$$

となり当てはまるし、コサイン関数でも、

$$\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}t^2}\cos(\omega{t})=-{\omega}^2\cos(\omega{t})$$

となり、これも当てはまります。さらに、このサイン関数とコサイン関数を、定数$A, B$を使ってブレンドした

$$f(t)=A\cos(\omega{t})+B\sin(\omega{t})$$

という関数も、

$$f^{\prime\prime}(t)=-{\omega}^2f(t)$$

を満たしています!これは、微分という演算は、足し算で繋がれている関数に別々に作用することから来ています。

 ところで、2次方程式には一般に2つの、3次方程式には3つの解が存在したように、微分方程式にも解に求められる条件があります。それは、1階の微分 $f^{\prime}(t)$ が含まれる微分方程式の一般解には任意定数が1つ、2階の微分 $f^{\prime\prime}(t)$ が含まれる微分方程式の一般解には任意定数が2つ必要ということです。

 したがって、この与えられた微分方程式の一般解は、

$$f(t)=A\cos(\omega{t})+B\sin(\omega{t})$$

になります。

問題を解く際の便利な形を覚えておく

 この一般解は、例えば単振動の運動方程式を解いたときの位置の時間変化 $x(t)$ などがあります。実際に問題を解く際には、初期条件と呼ばれる$t=0$での条件を考慮した位置の時間変化の関数を求めるのがほとんどです。例えば、質点を「$x=l$まで伸ばして(条件1)」から「静かに、つまり初速度$dx/dt=0$で(条件2)」運動させるなど、聞いたことがある場面想定だと思います。ここで、上に書いたようなサインとコサインをそれぞれ定数倍してから足し合わせた形:

$$f(t)=A\cos(\omega{t})+B\sin(\omega{t})$$

の一般解を使うと、実はこの条件を関数に当てはめるのに非常に便利なことがわかります。すなわち、$t=0$を代入する(条件1)とサインが消えてくれて、微分してから$t=0$を代入する(条件2)とコサインの部分が消えてくれるので、$A$が初期位置(条件1)、$B$が初速度(条件2)に対応してくれるわけです。

 しかしながら、教科書や授業によっては、この形ではなく、三角関数の合成をおこなった、

$$g(t)=C\sin(\omega{t}+\phi)$$

という形が一般解として紹介される場合があります。この場合、位相$\phi$が登場してしまうために、初期条件を当てはめるのが大変になってしまいます。

2つの微分方程式の一般解のまとめ

 長くなったので一旦まとめてみます。

微分方程式の一般解

 一般解は、解のうち、任意定数が微分階数の分の個数だけ入っているもので、

・$f^{\prime}(t)=-\textcolor{black}{k}f(t)$

  任意定数$A$として、$$f(t)=Ae^{-kt}$$

・$f^{\prime\prime}(t)=-{\omega}^2f(t)$

  任意定数$A, B$として、$$f(t)=A\cos(\omega{t})+B\sin(\omega{t})$$

 微分方程式の解の公式!みたいに覚えるというよりかは、微分方程式の特徴に注目して、何か知っている関数を代入してみようという姿勢が大切だと思います。これは例えば漸化式を解く際に、ぱっと見では一般項が思いつかないから、 $a_n=pn+q$ の形にならないかな〜と代入する思考と同じです。

 また、ここでは指数関数と三角関数という2つの関数が出てきましたが、実はこれらは非常に仲が良く、オイラーの公式と呼ばれる、

$$e^{i\theta}=\cos{\theta}+i\sin{\theta}$$

という式で繋がっています。つまり、複素数まで許してしまえば、指数関数とも三角関数とも捉えられるのです。したがって、今回紹介した2つの微分方程式は、例えば複素数 $\alpha$ を使って、

$$f(t)=e^{-\alpha{t}}$$

は絶対に解になってくれます。これに関連する話題はこちら: 線形微分方程式で解をe^x(exp)と仮定するのはなぜか?

微積分学と物理学

 「高校物理の範囲で微積分は便利」という話はたまに聞くことがありますが、その際の応用例として紹介されるのは力学と電磁気学が多い気がします。しかしながら、当然ではありますが今後大学で学んでいく波動や熱力学などでも至る所で微積分が顔を出し始めます。波動なら、例えばいくつかの点光源から発せられた光が集まってスクリーン上でできる像の強度計算は積分の計算で行います。力学でも、例えば全体が均一な密度ではない剛体を扱うなら、全質量を求めるために3次元的な積分を行います。熱力学では最初から変数が多いため、他変数関数の微分である偏微分が何度も出てきます。少しずつ微積分の表現に慣れるのが良いと思います。

解くのもいいけど、微分方程式を作ってみるのもいい

 この記事の目的は終わりましたが、最後に別な視点で微分方程式を考えて見たいと思います。それは、先に関数を決めておいて、それが満たす微分方程式を作ってみようという話題です。これは微分方程式の理解を深め、さらに一般解に含まれる任意定数の個数の意味もわかるようになります。

指数関数

 まずは指数関数を考えてみます。

$$f(t)=Ae^{-kt}\ \cdots(*)$$

としてみます。微分方程式を作るには、当然、微分された項が必要です。$(*)$式の両辺を $t$ で微分すると、

$$f^{\prime}(t)=-k\times{}Ae^{-kt}$$

となります。ここで、$(*)$式と、この式の右辺に同じ関数があるのでこれを消します。$(*)$式の右辺をこの式の右辺の$Ae^{-kt}$に代入すると、

$$f^{\prime}(t)=-kf(t)$$

という微分方程式が得られます。別な方法としては、最初の$(*)$式の指数関数を左辺へ移動する(両辺に$e^{+kt}$を掛ける)ことで定数$A$について解いた形:

$$f(t)\times{e^{+kt}}=A$$

の両辺を $t$ で微分すると、左辺に積の微分公式が使えるので、

$$f^{\prime}(t)e^{+kt}+kf(t)e^{+kt}=0$$

$$\therefore{}f^{\prime}(t)+kf(t)=0$$

となるので同様の微分方程式を得ることができます。

三角関数

 次に三角関数を考えてみます。

$$f(t)=A\cos(\omega{t})+B\sin(\omega{t})\ \cdots(**)$$

として、両辺を時間 $t$ で微分すると、

$$f^{\prime}(t)=\omega\bigg\{-{A}\sin(\omega{t})+{B}\cos(\omega{t})\bigg\}$$

となり、これをさらに微分すると、

$$f^{\prime\prime}(t)=-{\omega}^2\bigg\{{A}\cos(\omega{t})+{B}\sin(\omega{t})\bigg\}$$

となって、この2回微分を行った式の$\{\ \}$内には、$(**)$式の右辺の関数があるので、ここに$(**)$式を代入すると、

$$f^{\prime\prime}(t)=-{\omega}^2f(t)$$

となり、三角関数が解となる微分方程式を作ることができました。

微分の回数と任意定数の個数

 2つの関数で微分方程式を作成し、元の関数に入っていた任意定数$A, B$が消えた方程式を作ることができました。指数関数の微分方程式は1回の微分を行うことで1つの、三角関数の微分方程式は2回の微分を行うことで2つの任意定数を消すことができたわけです。

 この経験から逆に、微分方程式の一般解に必要な任意定数の数を理解することができます。例えば、2階の微分方程式ならば、それを作るために2回微分を行うため、2つの任意定数が一般解には必要だとわかります。

いずれ遭遇する別なタイプの微分方程式とその解き方

 今回扱った微分方程式は2つだけですが、今後勉強が進んでいくと様々な微分方程式やその解法に出会うことになります。ここでは少しだけ紹介したいと思います。

 例えば、力学では物体の速さの2乗 $v^2$ に比例して大きくなる抵抗力「慣性抵抗」が作用している物体の運動方程式:

$$m\frac{\mathrm{d}v}{dt}=mg-kv^2$$

が登場します。これも、十分に時間が経てば一定の速度に落ち着くので解に $e^{-\lambda{t}}$ の形が含まれるのですが、これは詳しく解くと

$$v\propto\frac{1-e^{-\lambda{t}}}{1+e^{-\lambda{t}}}$$

という双曲線関数の形に比例したものが解になることがわかります。この方程式は変数分離法という手法で解くことが多いです。

 「強制振動」と呼ばれるタイプの微分方程式も重要です。周期的な外力を系に加えるような物理現象を扱います。例えば、電気回路に対して周期的な電圧(交流)を加えた場合などが挙げられます。

$$RI+L\frac{\mathrm{d}I}{dt}+\frac{Q}{C}=V_0\cos(\omega{t})$$

この式なら、角速度 $\omega$ の電圧を$RLC$回路に周期的に印加していることを意味します。

 他にも、波を記述する波動方程式:

$$\frac{\partial^2{\psi}}{\partial{x}^2}=\frac{1}{v^2}\frac{\partial^2{\psi}}{\partial{t}^2}$$

は変数が$x, t$の2つ含まれる関数を扱う偏微分方程式ですが、とても大切です。これは、解を $\psi(x, t)=X(x)T(t)$ と仮定して解き進めることが多いです。

 量子力学における原理式であるSchrödinger(シュレーディンガー)方程式:

$$i\hbar\frac{\partial}{\partial{t}}\psi(\vec{r}, t)=-\frac{{\hbar}^2}{2m}{\nabla}^2\psi(\vec{r}, t)+V(\vec{r}, t)\psi(\vec{r}, t)$$

も偏微分方程式です。